お口の中の地雷原

会社にいて厄介な事の一つは、
敬語を使わなければならないことだ。

何で年齢が上なだけでかしこまらなきゃいけねーんだよ!
…とか言いたいわけではない。
目上の人に敬語を使うのがダサいみたいな思考は趣味ではない。

その代わりと言ってはなんだが、
敬語には、致命的な欠陥である。

それは、


噛みやすい


ということだ。

「させていただきます」と言おうとしても

「サシテトゥスタキャス」になるし、

「いまお時間宜しいですか?」と言おうとしても

「ッマオシュカヨシューシューシュカ」になってしまう。

 

そりゃそうだ。
単純に、敬語はタメ語と比べて文字数が多いし、
噛みやすいことで悪名高いサ行やタ行が出てきやすい
質、量ともに噛みやすさが追及された意欲作だ。

これでは、発話者に噛めと言っているのと変わらない。
敬語とは、お口の中の地雷原なのだ。

発話するまで、正しい発音になるか分からない。
しかも、相手は目上の人。
このような状況下において、人はどうなるか?
答えは、単純だ。

敬語を言おうとするたびにビビる

上司や先輩は部下(後輩)である私が
自分に対してビビってると思っているかもしれないが、
私が緊張の糸を張り詰めているのは決してあなたに対してではない。
敬語に対して、だ。

年次が上であるあなたを差し置いて、
単なる意思の伝達手段である「敬語」に対して私は恐縮しているのだ。

或いは、上司・先輩に対する敬服の念を、
敬語が奪っていると言ってもいいだろう。

皮肉にも相手を「敬う」という営みにおいて、
敬語の存在は害悪でさえある。

敬語が無くなれば、あなたを尊敬する余裕がもうちょい出てくるかもしれない。

しかし、あいにく今は無理だ。
敬語があるから。

古来より儒教の思想が根付いている日本社会において、
敬語を廃止する見込みは当分なさそうだ。

だから、次善の策として、
敬語を噛みにくい文字列に変更する必要があるだろう。

タメ語と比較しても噛むリスクが高くない、
何なら噛むリスクが低い文字列の敬語を新たに考案しようではないか。


上述の通り、敬語を噛みやすい原因は、

1.タメ語に比べて文字数が多い

2.サ行やタ行といった、噛みやすい音声の含有率が高い

の2点である。そのため、

1.タメ語に比べて文字数が少ない

2.「ンァ」や「ンフゥ」といった、噛みにくい音声の含有率が高い

 

後編へ続く

「歯周病」の新しい呼び方を考えます!!

「虫歯」という名前を考案した人物に、

心からの賛辞を送りたい。

歯に菌が溜まり、痛みや穴、出血を引き起こすアレを、
「虫歯」と形容するセンスには脱帽脱糞脱脂綿である。

罹患者の恐怖を刺激し、早急な治療を促すに足るネーミングだ。

コピーライターに憧れる若者は、
この「虫歯」のようなネーミングセンスを手本にするがいい。

まず、世の中の大半(特に女子)が「虫」を毛嫌いしているという点に着目し、
それを口の中にある「歯」と組み合わせるという攻めの姿勢を高く評価する。

もし口の中に虫が居たら、と考えると恐ろしいだろう。
虫歯という現象はそれに匹敵する恐ろしさなのだ、
というメッセージが「虫歯」という言葉には込められている。

スタバで蛾が飛んできただけで大騒ぎするほど虫が苦手なくせに、
虫歯を放置している女子高生はダブルスタンダードだ。

いますぐ歯医者に直行するのか、
全ての歯を抜いて代わりにテントウムシを詰め込むのか選ぶがいい。

さて、このたび虫歯について言及したのは他でもない。
歯周病の恐ろしさを喚起するためだ。

歯周病」は虫歯とは異なり、
歯そのものではなく歯茎の疾患である。
酷くなると悪臭や出血を伴い、
最悪歯がポロリと抜け落ちるなど、
その恐ろしさは虫歯に引けを取らぬと言っていいだろう。

しかし、勘のいい読者はお気づきかと思うが、
歯周病」というネーミングはいささかインパクトに欠ける。

「虫歯」を恐れる子供は枚挙にいとまがないが、
歯周病」を恐れる子供が果たしているだろうか。
もし居たら、お前はおっさんか!と突っ込みたくなりそうだ。

しかし幼少期に歯周病の恐ろしさを植え付けられないがために、
大人になって歯周病のリスクを舐めている大人は多い

まあ虫歯にならなければとりあえず大丈夫っしょ、
という気持ちが心のどこかにないだろうか?

そのため、歯周病」は改名が必要である。
「虫歯」に負けず劣らず罹患者の恐怖を刺激し、
予防・治療の衝動を喚起するに足る新しい名前を。

前述の通り、「虫歯」という言葉の構造は

「口の中にあったら嫌なもの」+歯

という風になっている。

この原則に準拠すると、

「口の中にあったら嫌なもの」+歯茎

というプロセスを経ることで、
歯周病」を改名することが出来るはずだ。

もちろん「虫歯茎」でもかなり気色悪さの演出に成功しているが、
やはり二番煎じだと伝わるものも伝わらない恐れがある。

ここは、「虫」以外で口の中にあったら嫌なものを幾つか挙げ、
その中で最も歯茎と組み合わせて語感の良くなる言葉を採用するとしよう。


①キリン歯茎

②スパンコール歯茎

③満腹時のラーメン次郎歯茎

④不発弾歯茎

⑤おてんば歯茎

寄生虫アニサキス歯茎

⑦お香典歯茎

⑧ポルシェ歯茎

イエス・キリスト歯茎

⑩ありありむにむに歯茎


問題設定の重大な欠陥にお気づきだろうか。
そもそも、食べ物以外のものが口の中にあったら、ふつう嫌だ。
あまりに多すぎる選択肢が、意思決定の障害となっているのではないか?

しかし、選択肢がありすぎるときは直感に従うのが吉だ。
上記10項目を歯周病の新しい名前の候補者とし、
厳正な審査により選考を進めていく所存である。

ツイッターでアンケート取りたいけどフォロワー一人もいない…

 

仕事どう?と聞かないで

 

「仕事どう?」という質問がどうも苦手だ。

いくら私が女子にちょっと話しかけられただけで好きになっちゃうタイプでも、

女子に「仕事どう?」とか聞かれたら流石に好きになっちゃうだろう。

相手にとってはただの雑談のつもりかもしれないが、

私にとっては職務質問である。

※婦人警官との妄想ラブストーリーについては、稿を改めて論じたい。

 

身も蓋もないことを言えば、

この「仕事どう?」などというフワっとした話題は、

「私はあなたとそんなに仲良くなくて、それ故に話題がないです」

という忌憚のないメッセージだと思う。

だから、こんな質問ごときで好きになっちゃうのは非常にマズイ。

 

こうした不都合な真実を想起させるという点も、

「仕事どう?」が私を苛む原因の一つなのだろう。

 

さて、本稿の目的は、

仕事どう?に上手く答えられないメカニズム及び、

この恐怖の職務質問を乗り切る手法について述べることだ。

 

「仕事どう?」

「そうね大体ね~」

 

だけで乗り切れればこれ以上嬉しいことはないが、

現実はそんなに甘くない。

 

思うに、この質問が苦手なのは、

「働きたくない」

という本心を隠して話さなければならないからだ。

 

「働きたくない」は職場の人相手だと、

相当仲良くない限り言えない至言である。

お互いのことをよく知らない段階でネガティブ発言をすると、

高確率で変な風になるのは人類の常である。

レストランで店員にマズいですねとか言えないのと同じである。

 

ただ、その逆に

「楽しい」

「充実してる」

「圧倒的性徴!」

とか言っても心がこもらず棒読みになるから変な風になるし、かといって

 

「仕事とかけましてハ長調と説きます。

その心は、

どちらも発見(白鍵)の連続でしょう(作り笑顔)。」

 

などど答えた日には、

バイ奴の名を欲しいままにすることになるだろう。

 

つまり、「仕事どう?」という凶弾に倒れそうになった場合、

本当のことを言わず、かつ嘘も言わないような対応が求められる。

もちろん、いい大人なので「黙秘」は許されない。

そうすると、おのずと次のような対応が推奨されるだろう。


1.こっちから先に聞く(会話のライジングショット)

婦「久しぶり~しg」

私「○○ちゃん久しぶり!仕事どうよ?」


2.超適当に答え、話題を逸らす


婦「久しぶり~仕事どう?」

私「Perfect!え、○○ちゃんって味噌汁から食べる派なんだ!奇遇~」


3.ものすごい瞬発力で相手の質問に被せ、「発言が被った」というおもしろ事実へと焦点をずらす


婦「久しぶり~仕事どう?」

私「...ヒッサッシッブリシゴトドウーッ?」(婦の発言に同期)

私「被ったwwwうけるねww」

 

4.笑ってごまかす

婦「久しぶり~仕事どう?」

私「ンフゥw」

 

5.お互いの関係性を熟年の夫婦と錯覚させる

婦「久しぶり~仕事どう?」

私「..うん」

婦(「この人はいつも私の話を聞いているのか分からない。聞いた私がバカだったな、はあ。」)

 

5つあれば、5回分の「仕事どう?」に対応できる。

これで2週間~1か月は乗り切れることだろう。

ちなみに私は4がお気に入りである。

 

NAVERまとめに投稿してみようかな。

 

飲み会教習所 ~前編~

私はサラリーマンとしての才覚に欠けるようで、
毎日のように先輩からの叱咤激励ご指導ご鞭撻カンジャンケジャンを浴びながら暮らしている。
あまりに頻繁に怒られるため、
先輩の怒りの沸点が通常よりも低いんじゃないか錯覚するほどであるが、
弊社の住所は南アルプスでもネパールでも火星でもない。
その証拠に、部長が平素より常食しているダブルコンソメパンチの袋が、
気圧の低さによりパンパンに膨らむことは決してないのだ。

 

ただ単に、私の日頃の行いがナットランのである。
しかし、なかなかどうして社会人としての所作は一朝一夕では身に付かない。
毎日新しいことを注意され、
その傍らで習ったけど運悪く忘れちゃった事案を注意され、
時々習ってないと分かるわけないことを普通に注意され…
毎日がパンク寸前と言っても過言ではない。
インプット過多による前頭葉自然発火を防止するために、
こうして考えを整理している次第である。

 

さて、叱られる案件は多岐にわたるが、
中でも最も頻繁に指摘されるのが、
「飲み会での気遣いが出来ない」ことだ。
少しヘマをやるだけで
仕事でしくじった時を凌駕する勢いで叱られるので、
正直かなり参っている。

 

気遣いのできない人間にとって、
飲みの席はさながら赤外線を張り巡らされた通路のようなものだ。
気を付けることが多過ぎて、
少し油断するとセンサーに触れてブザーが鳴る。
何かに気を取られ、片手落ちになる。
次にその逆。
悪循環。

もはや「気遣い」と「気違い」の見分けがつかない。

(老眼鏡の宣伝)

 

というわけで、この場を借りて、
およそ40万人に上ると言われる新入社員諸君が、
この難解なダンジョンを攻略するためのヒントを備忘録として残したいと思う。

いつの日か、飲み会の教習所が設立されるのを夢見て・・・!


0.前提
まず、新入社員は飲み会の幹事をやらされることが多いため、
あなたが幹事であるという前提で話を進める。
ちなみに新入社員の場合、
幹事でなくとも幹事に引けを取らない立ち居振る舞いが求められている場合も多いため、
とにかくあなたは幹事である。幹事長でも、総書記でもない。幹事だ。


1.飲み会が始まるまで

まず幹事は誰よりも早く会場に到着しなければならない。
しかし幹事の日に限って、終業時間間際に電話がかかってくることだろう。
今日は海外拠点のマネージャーが、
為替変動の販価への影響について何やら報告したいらしい。
しかしそんな時はラジオDJ風のトーンで、

"Yeah,I'm Kanji!! I can't English now!! See you very much!"

と言い捨て、颯爽と電話をガチャり、
居酒屋へ直行しなければならない。

でも大体の場合、誰かしら先に来ていてお待んた聖矢~と言わざるを得ない。


2. 飲み会序盤
会場に着いたら、まずはテーブルのインフラ整備に取り掛かろう。
さながら、高度経済成長の真っ只中、
日本中に道路網を張り巡らせた田中角栄のように。

卓上のインフラ整備は
・箸
・おしぼり
・取り皿
・水(飲み会じゃなくてご飯の時)

を徹頭徹尾徹底しよう。

この時の注意は、これらが出来たからと言って気遣いが完了したと油断することだ。

まだ乾杯も始まっていないからな。

ちなみに取り皿の数が合わない は飲み会あるあるなので、
回転寿司店の会計時並みに枚数に細心の注意を払うこと。

 

あと地味に大事なのは、すぐに注文できるように、
注文ボタンを自分の近くに置くこと。
ボタンが固定式で動かず、しかも席の奥の方にある場合は、、
「新入社員が座ったら明らかに怒られるであろう上座オブ上座に注文ボタンがあるのはおかしい」
とカスタマーセンターに電話をかけよう。

 

~後編へ続く~

仕事ぶりとかじゃなく、昼寝のフォームにダメ出しを食らった

 ある日の昼休み、仮眠をとっていると何故か先輩にずり起こされた。

どうも、昼寝のフォームが良くなかったらしい。マジか。
「あなたは睡眠グスクールのコーチか?」という感想を、
あ、はぃ、サーセンという返答の裏に隠した。

 

それにしても、一体何がいけなかったのだろう。
首を背もたれに擡げに擡げていたことか?
或いは、まるで王様のように両腕を肘置きに置いていたことか?
はたまた、口をあんぐり開けて爆睡していたことか?
もしくはそれら全てか?
寝起きの頭では到底考えられる筈もなかった。

 

いずれにせよ、寝かたを変えないと昼休みの安眠が保証されない有事だ。
この場を借りて、新しい昼寝フォームを考えてみたい。

 

まず、まるで王様のように両腕を肘置きに置いていたのがいけなかったと仮定する。
腕のポジショニングとして他に考えられるのは

 

腕組み

 

または、

 

ウォータースライダーの構え

 

である。
腕組みは失礼な印象を与える恐れがあるので、
ここはウォータースライダーの構えを採用する。

 

次に首を背もたれに擡げに擡げていたのがいけなかったと仮定する。
しかし、これを改善するのは難しい。
なにせ、この状態が布団で寝ている感じに最も近いからだ。
というわけで、この首の件については

 

隠蔽

 

で対応するとしよう。

 

最後に、口をあんぐり開けて爆睡していたのがいけなかったと仮定する。
しかしながら、これについては打つ手が全くない。
寝てる間に口が開いているか否かはコントロールできないのだ。寝てるのだから。

 

Focus on what you can control.

 

の精神に基づき、口の件には余計なリソースを割かないという意思決定を下した。
ただ、元手の要らない対策として、
課長の視線に入らないポジションで寝るという案を試してみよう。
課長のデスクは衝立を挟んで私の向かいにあるので、
私は手前に出れば出るほど課長から見えなくなる。
更にここで、ウォータースライダーの構えのおかげでデスクに肘を引っかけることができ、
安定性の向上という思わぬシナジー効果に気付くこととなる。

 

以上のアイデアを総合した結果、
次のようなフォームが昼休み中の睡眠に最も適しているという結論に至った。


参考画像


お疲れなさい。

課長が、財布の購入を勧めてくる

大学に入った頃からだろうか、私は財布を持たなくなった。
別に人と違う俺カッケーみたいなのじゃなくて、
単純に財布運が悪かったためだと思っている。
ただ、今となっては財布を持たない生活の数々のメリットに気付き
(例:財布を持たなければ、財布を無くす心配がない)、
ポケットに直接金を入れて生きるのが当たり前になってしまった。
そんな状況を見かねて課長が「早く財布買えよ」と勧めてくるのが最近のもっぱらの悩みだ。

気晴らしに、思い出せる範囲で私の財布遍歴を書き連ねるとしよう。
壮大なサーガとしてご笑覧下さい。

大学に入るときに、母が昔使っていたという薄茶色い財布を貰った。
それなりに気に入っていたけれど、耐久性に難ありだったため長くは続かなかった。
なにせ、90度傾けると横から小銭がチャリンチョリン零れ落ちるのだ。
これでは物理的に金運が悪くなると直感し、
直ちに使用を中止したのだった。

それ以降、現金やレシート、カード、*****など、
全ての財布の中身はポケットの中に移行した。
部活の準備体操でジャンプするとチャリンチョリン音がしたり、
柔軟体操で寝転がると小銭がポケットから零れ落ちたりと、
良いことばかりではなかったが、財布のない生活は身軽だった。

しばらくして、母方の祖母と食事をする機会があり、
プラスチック製のがま口を祖母から貰った。
真っ赤で、全体を丸いウロコ?みたいなもので覆われた、
可愛いとも奇抜ともとれるデザインの財布だった。

これも何かの縁だし、せめて小銭だけでも財布にと思って、
その赤いがま口を使うことにした。
実に数年ぶりに財布生活を再開した瞬間だ。
赤ウロコ財布はみるみるうちに小銭で膨れ上がり、
一時期、飲み会で割り勘の時に何故かいつもピッタリ出すキャラを確立しそうにまでなったが、
この財布もまた長くは続かなかった。

実はかなり年季が入っていたためか、
前述の赤くて丸いウロコがポロポロと剥がれ落ちるようになり、
カバンの中が赤丸だらけになったためだ。
想像してみてほしい。
カバンの中を覗くたびに、暗闇の中で赤く光る無数の視線に囲まれた時のことを。
眼からウロコとかではなく、眼がウロコという常軌を逸した状況を。

そういうわけで、あえなく財布フリーな生活に逆戻りしたのだった。

しばらくの間、財布難民として彷徨う、低迷した生活が続くことになる。

しかし、或る時私は究極の財布に出会った。
その財布の名は

輪ゴム

である。
この財布の優れた点としては、
現金はまあ良いとしてカード類がばらけないか心配という、
財布フリーな生活最大の弱点を解消する点にある。
この財布にカード類をしまうだけで、
一枚だけどっか行っちゃうという事案を防ぐことが出来る。皆さんも是非どうぞ。

これで、
交番に免許証取りに行かなきゃいけないから今日のドライブ遅刻するわ、ゴメン!
と後輩に情けないメールを送る生活ともおさらばだぜ!

この新型財布「輪ゴム」は耐久性に難があり月一ぐらいで壊れるが、
家の台所にいけば無料で購入することが出来る。
皆さんも是非ぞうど。

こうした数々のメリットから、
時は流れ会社員になった今もWAGOMUユーザーである。
そう、冒頭では財布など持たぬと書いたが、
私は財布を持っているのだ。WAGOMUという名の。
ただ、周囲の人々がやれ財布を買えだのやれ彼女創れだの言うばかりに、
財布を持っていない錯覚に陥り、
財布持たないキャラを気取っているのだ。


後のマネークリップの起源である。

先輩が残したご飯を貰おうとしたら変な風になっちゃった話


私が今働いているチームには、ランチを一人で食べる文化がない。

「え、ご飯一人で食べてたの?」

配属初日、当たり前のようにbotch飯を決め込んだ私は、
まるで纏足と辮髪を両立し、家畜の数で甲斐性を競い、
黒曜石のペニスケースを着用する少数民族のように異質に見えたらしい。

些かカルチャーショックではあったが、
その次の日からは、先輩たちと一緒にランチを食べるようになった。
丁度ポケモンGOが流行り始めた頃で、
信心深い私はGOに入ってはGOに従えという神の啓示と理解したのだった。

しかし、カルチャーショックはそれだけでは済まされなかった。
彼らとの文化の違いに苦しんだ一幕について話そう。。
(※念のため、これは留学経験とかじゃなく、ただ単にコミュ将が会社員になった時の話である。)

事の発端は、チームの先輩(仮に「あやや」と呼ぶ)が、
茶碗に幾ばくかの白米を残したまま、食事を終えようとしていたことだった。

元来、食べ物を残すことに強い抵抗を覚える私は、
学生時代と比べても衰えを感じさせぬさも当たり前のような感じで

「ご飯、頂きますね」

と一言断るや否やあややの残したコメを掻き込んだ。
その途中、課長までもがご飯(及び付け合わせのキャベツ)を残しているのを見つけ、

「あ、課長のも頂きますね」

報連相の原則に基づいて上長の承認を得るや否や、
課長の残したコメを掻き込み、キャベツを咀嚼した。
テーブルの上には、清々しいほどにemptyな食器だけが残った。

私は自らの有する食欲(リソース)を通じて、
残飯(イシュ―)を処理(ソリューション)した

(要約:良いことしたぜベイベー)
という認識しか頭になかったため、
先輩方が「コイツ、マジか…」ってなっていることを知る由もなかった。

後日、先輩(仮にiQOSと呼ぶ)が、本件について説教を垂れた。
「いいか、お前な、あー…お前はどうしてこう…そうなんだ!もっとこう…色々あるだろう!
あぁ?聞いてんのか?罰として残業10時間!」

※実際には上記のようなパワハラまがいの説教は行われていない。
しかし、博多ラーメンのようにか細い麺タルを持つ私には、
そのように聞こえたというだけの話である。
そもそも先輩はiQOSとか吸ってない。


とにかく、この一件から

「先輩の残したご飯を食べるのはアウト」
という教訓を不本意ながら学んだのだった。
今も部署のメンバーでランチを食べているが、
あややの残したコメがベルトコンベアの向こうへ旅立つのを見送る毎日を過ごしている。