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課長が、財布の購入を勧めてくる

大学に入った頃からだろうか、私は財布を持たなくなった。
別に人と違う俺カッケーみたいなのじゃなくて、
単純に財布運が悪かったためだと思っている。
ただ、今となっては財布を持たない生活の数々のメリットに気付き
(例:財布を持たなければ、財布を無くす心配がない)、
ポケットに直接金を入れて生きるのが当たり前になってしまった。
そんな状況を見かねて課長が「早く財布買えよ」と勧めてくるのが最近のもっぱらの悩みだ。

気晴らしに、思い出せる範囲で私の財布遍歴を書き連ねるとしよう。
壮大なサーガとしてご笑覧下さい。

大学に入るときに、母が昔使っていたという薄茶色い財布を貰った。
それなりに気に入っていたけれど、耐久性に難ありだったため長くは続かなかった。
なにせ、90度傾けると横から小銭がチャリンチョリン零れ落ちるのだ。
これでは物理的に金運が悪くなると直感し、
直ちに使用を中止したのだった。

それ以降、現金やレシート、カード、*****など、
全ての財布の中身はポケットの中に移行した。
部活の準備体操でジャンプするとチャリンチョリン音がしたり、
柔軟体操で寝転がると小銭がポケットから零れ落ちたりと、
良いことばかりではなかったが、財布のない生活は身軽だった。

しばらくして、母方の祖母と食事をする機会があり、
プラスチック製のがま口を祖母から貰った。
真っ赤で、全体を丸いウロコ?みたいなもので覆われた、
可愛いとも奇抜ともとれるデザインの財布だった。

これも何かの縁だし、せめて小銭だけでも財布にと思って、
その赤いがま口を使うことにした。
実に数年ぶりに財布生活を再開した瞬間だ。
赤ウロコ財布はみるみるうちに小銭で膨れ上がり、
一時期、飲み会で割り勘の時に何故かいつもピッタリ出すキャラを確立しそうにまでなったが、
この財布もまた長くは続かなかった。

実はかなり年季が入っていたためか、
前述の赤くて丸いウロコがポロポロと剥がれ落ちるようになり、
カバンの中が赤丸だらけになったためだ。
想像してみてほしい。
カバンの中を覗くたびに、暗闇の中で赤く光る無数の視線に囲まれた時のことを。
眼からウロコとかではなく、眼がウロコという常軌を逸した状況を。

そういうわけで、あえなく財布フリーな生活に逆戻りしたのだった。

しばらくの間、財布難民として彷徨う、低迷した生活が続くことになる。

しかし、或る時私は究極の財布に出会った。
その財布の名は

輪ゴム

である。
この財布の優れた点としては、
現金はまあ良いとしてカード類がばらけないか心配という、
財布フリーな生活最大の弱点を解消する点にある。
この財布にカード類をしまうだけで、
一枚だけどっか行っちゃうという事案を防ぐことが出来る。皆さんも是非どうぞ。

これで、
交番に免許証取りに行かなきゃいけないから今日のドライブ遅刻するわ、ゴメン!
と後輩に情けないメールを送る生活ともおさらばだぜ!

この新型財布「輪ゴム」は耐久性に難があり月一ぐらいで壊れるが、
家の台所にいけば無料で購入することが出来る。
皆さんも是非ぞうど。

こうした数々のメリットから、
時は流れ会社員になった今もWAGOMUユーザーである。
そう、冒頭では財布など持たぬと書いたが、
私は財布を持っているのだ。WAGOMUという名の。
ただ、周囲の人々がやれ財布を買えだのやれ彼女創れだの言うばかりに、
財布を持っていない錯覚に陥り、
財布持たないキャラを気取っているのだ。


後のマネークリップの起源である。